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【映画・書籍等の紹介、評論】
佐賀のがばいばあちゃん【本・映画等の紹介、評論】

佐賀のがばいばあちゃん

明るい貧乏生活とさりげない優しさ


 同名のエッセイ的自伝小説「佐賀のがばいばあちゃん」(島田洋七著/徳間文庫刊)の映画化作品。昭和中期にはどこでも居た苦難続きで貧乏でも元気なばあちゃん≠フ生き様が明るく描かれている。

◆ 漫才の原点はど貧乏だった

 島田洋七と聞いても1980年代初頭、漫才ブームの中心にいた人物だ≠ニ知る人は少なくなってきているのかも知れない。当時の「漫才ブーム」は、日本社会に根強くあった約束事やしきたりをひっくり返し、本音で語るスタイルで爆笑を勝ち取ったものだった。特に島田洋七と島田洋八のコンビ「B&B」は一時期圧倒的な人気を誇り、言いたい放題言う洋七のテンポに日本中が酔いしれていた。

 ある種破壊的ともいえるこの笑いは、社会に与えた影響も大きかったのではないだろうか。決まり事ばかりに汲々としていた日本社会に大きな風穴を開けた、とも言える。
 しかしこうした本音で語る笑いは芸の熟成度を下げ、ブームが去った後に残った芸人はほんの一握り。島田洋七もマスコミから消えた芸人の一人となっていた。

 あれから20数年経ち、この映画を観ると当時の漫才ブームに対してもまた新たな感慨が湧く。日本中が笑ったあの語りや破壊力は佐賀のがばいばあちゃん≠アと徳永サノ#kちゃんが原点だったことに気付く、たとえば ―――

……何も無いところから生まれた生活の智慧は、飽食と虚飾に慣れた現代人にとっては大きな衝撃だろう。こうした生活をうらやましい≠ニは思わないが、物にあふれた生活をリセットしたい気持ちは湧いてくる。

 また、映画全体に底流している周囲の人たちのさりげない優しさ≠ヘ、現代社会が失いつつある極上の宝であろう。これ見よがしの善行は、時として受け手の迷惑ともなる。
「人に気づかれんようにやるのが本当の優しさ」と語るがばいばあちゃん。足しげく寺参りに勤しみ法話を聞かれた果報でこうした語録も生まれたのだろう。

 さて、今も漫才・お笑いはそれなりの人気だが、1980年代初頭の漫才と比較すると、芸の熟成度は高いし個性豊かだが、全体的なパワー不足は否めない。こうした中、洋七の語りはがばいばあちゃん≠サのものと重なり、ほら吹き的都市伝説も生まれるてきた。
偉大なるばあちゃんパワー=Bそれはゼロから出発した日本人の一つの原点でもあるのだろう。

公開:
平成18年5月(全国は6月)
監督:
倉内均
プロデューサー:
伊藤伴雄、竹本克明
企画:
江原立太
原作:
島田洋七「佐賀のがばいばあちゃん」(徳間文庫刊)
脚本:
山元清多、島田洋七
撮影
三好保彦
音楽:
坂田晃一
出演:
 吉行和子、浅田美代子、鈴木祐真、池田晃信、池田壮磨、緒形拳、三宅裕司、島田紳助、島田洋八、山本太郎、工藤夕貴 他
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