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【Oの食卓に花束を】

犬は飼い主に似る? A

ジェラシーもセンチもある犬の情緒

 新入りへの嫉妬

 最近はハムスターを飼う家庭も増えたが、かつて我が家にそのスター君がやって来た時の犬の態度には実に興味深いものがあった。普段、喜怒哀楽を表に出さない例のペスなのに、そのルーキーを見た瞬間、“犬の顔にこれほど表情を動かす筋肉があったのか!”と驚かされる程物凄い形相に変ったのだ。そして親の仇にでも出くわしたかのように唸り始めたのである。

 これは犬どうしが喧嘩の時に見せる威嚇とは全く違う、丁度『もののけ姫』に出てくる狼のモロが「タタラ者」たちに向けた憎悪のようで、深い嫉妬心がむき出しになった表情であった。

 おそらく皆が新スターの周りを取り囲んで「かーわいいネ」を連発したためであろう。犬も人間もジェラシーは心を狂わせるものらしい。

 夕焼けの情景

 さて、動物と人間の情緒の酷似を思わせるエピソードは枚挙にいとまが無い。
 例えば―― 私は高校生の頃、夕焼け空を見るのが大好きだった。高台から眺める空に雲が刻々と色あいを変えながらたなびくと、やがて人や街までが夕映えで一色に染まり、全てのものがたまらなく愛しい存在に思えてくるのだ。「浄土は西方の彼方」と経典に出ているが、こうした人恋しさを誘うイメージが同朋意識を喚起させるのかも知れない。 イメージ

 聞くところによると、猿の中でも、夕日をじっと眺め続けるセンチな奴がいるのだそうだ。景色が色彩を失っていくほんの一瞬手前、自然は一日のうちで最も美しい光景を残していく。こんな雄大なシーンを見れば、人も動物も忘れていた感動を呼び起こさずにはおれないのだろう。そういえばうちのペスも、夕空を見上げじっとたたずむことがあった。あいつも心に美を感じる隙間があったのかも知れない。
 さすがに飼い主に似てロマンチックな性格なのである。

 やっぱり食うこと

「人間もやっぱり動物なんだー」と、あらためて認識させられるのは食事時である。腹が減ってる時にレストランに入り、友達の注文したものばかり先に来て、自分の分が中々出てこない時には、私でも「うううーーワン」と叫びたくなる。「待て」の命令は犬も人間もつらいのだ。

 ところが、そのつらさを克服して、ちゃんとしつけられた犬はちゃんと命令を守る。人間の方が余程いいかげんで、「 わーかっちゃいるけど、やんめられない♪」と、間食・夜食をスイスイと摂る。おかげで何度ダイエットを試みても、リバウンドで余計に事態を悪化させてしまうのだ。比べてボンレスハムのようだったペスは日一日と引き締まっていき、1年後には中肉中背(?)になった。散歩に連れて行っても「へー、肥えとるネー。豚かと思った」などと後ろ指を指されることもないから、快適な気分で歩ける。

 もちろん、太った私と散歩することをペスの方はどう思っていたかは分からないが・・・

[Shinsui]


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